もう一人の自分という名の亡霊

生きている間に受けた「傷」というのは、時として痛みを伴う。

その傷が多くなれば思い出す回数が増え、その傷が深ければ痛みも増す。

 

思い出す原因を作っているのは、他でもないもう一人の自分がまだ精神的な場所で生きているからだ。

 

...そして、その「もう一人の自分」は「今の自分」に牙を剝けようとしている。

 

その「もう一人の自分」は、今の自分に対して「お前はそんな人間ではない」と否定してくる。

 

...

 

この問いかけもある意味では真実という名の解釈に過ぎない。

そして、的を射ているのもまた事実である。

 

...

 

だが、自分はもう「過去の自分」に戻るつもりはない。

 

...お前の言いなりになるつもりはない。

 

もう一人の自分が今の自分に「銃口」を向ける。

 

今の自分が「まだ手を出すな」と言っている。

 

...そうだ、まだ手を出すべきではない。

手を出すのは、撃った後だ。

撃った後に隙ができる。

 

精神世界でなら、現実ではあり得ないような方法を取ることも可能だ。

もう一人の自分に撃たれたあとで戻ってきたらいい。

...「もう一人の自分」はそれができない。

それができないからこそ、もう一人の自分は銃を下ろすことができない。

 

「今の自分」が今のパートナーだ。

「過去の自分」は自分を裏切った。

「過去の自分」はもうパートナーではない。